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我々が記録した愛知県防災航空隊の活動(主に訓練)を写真で紹介しています。

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平成26年10月28日 知多市・隊員投入訓練/夜間離着陸訓練 その3  

投稿者:進藤(ADPC SUPPORTERS)

3回に分けてお送りする、平成26年10月28日に新舞子マリンパークで行われた、知多市・隊員投入訓練/夜間離着陸訓練の模様ですが、今回はラスト。夜間離着陸訓練の部をお送りします。



"愛知県防災航空隊の夜間運行"

愛知県防災航空隊は、24時間運行を行う全国でも数少ない防災航空隊です。
夜間運行ではホイストを用いた救助は行うことはできませんが、救急搬送や大規模火災の偵察飛行などの出動が毎年数件発生しています。また、東日本大震災のような大規模災害が発生した際には、夜のうちに被災地の最寄空港まで進出し、翌朝からの活動に備える場合もあります。

愛知県の東部地域はほとんどが山であり、山間部で重篤な傷病者が発生した場合、車両で高度医療機関まで搬送するには数時間を要してしまいます。このような場合、防災ヘリの夜間運行が多いに役立ちます。
平成25年度の夜間運行件数は7件。この中には岡崎市民病院から大阪大学医学部付属病院への臓器搬送も含まれています。(臓器搬送のための出動は平成22年以来3年ぶり)
三遠南信自動車道の整備等、県東部地域の道路事情の改善により、夜間運行自体は数年前に比べると減少(平成22年度までは年間10件以上の出動があった)しているとはいえ、ドクターヘリが飛ぶことのできない夜間における救急搬送など、防災ヘリの夜間運行に対する県民の期待は大きなものであるといえます。



"夜間に飛ぶということ"

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消防は24時間活動する組織ですから、防災ヘリも24時間運行を行って当然と思われるかもしれませんが、夜間に飛ぶということはたいへん難しいことなのです。「難しい」=「危険」ということでもあります。
報道ヘリや遊覧飛行のヘリは夜間でも飛んでいるではないかと思われるかもしれませんが、それらのヘリは街の光で十分な明るさがある場所を飛行します。しかし防災ヘリが飛ぶのは明かりのない山間部。愛知県防災航空隊のわかしゃちも、名古屋飛行場を離陸して10分もすれば明かりのない山間部にさしかかります。ここを時速200キロで飛行しなければなりません。



<夜間飛行の危険性>

◇山が見えない(夜間でも操縦士の目で飛ぶ有視界飛行で飛行します)
◇不時着場が見つからない(夜間用の場外離着陸場か空港まで戻るしかありません)
◇天気がわからない(目視で天気が見えないし、東部山間地域は気象状況の把握が難しい)
◇雲が見えない(飛んでいる最中も気象状況の把握が難しい)
◇送電線が見えない(山間部にある多数の高圧線が見えず、接触事故につながるおそれ)
◇周囲が見えない(真っ暗なので周囲の見張りが難しい)
◇錯覚を起こしやすい(真っ暗なので操縦士の感覚が狂い、機体の安定が保てなくなる)
◇体が起きていない(寝ている状態から起きての活動開始なので、体が十分機能しない)
◇経験が少ない(機会が少ないので、操縦士も昼間運行に比べると多くの経験を積んでいない)


このようにたくさんの危険が夜間飛行にはあるのです。
皆さんは真っ暗な峠道をライトを付けずに自動車で走ることができますか?
それと同じ、いえ、それ以上の危険が伴うことを空で行うのが夜間飛行なのです。操縦士をはじめクルーには大きな負担がかかることは言うまでもありません。
昼間のフライトでは操縦士は通常1名で運行するところ、夜間運行時には操縦士2名で運行するのもそのためです。(難易度の高い運行形態であるため、わかしゃちの運行を行う中日本航空では、夜間運行に係る機長の資格を別途定めているそうです。)



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愛知県防災航空隊の夜間飛行にはナイトビジョンゴーグル(NVG)を使用していることをご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、実は操縦をしている操縦士はこのNVGは使用していないのです。機器を使えば周囲がよく見えて安全と思われがちですが、ゴーグルを付けると視界が極端に狭くなります(例えるならトイレットペーパーの芯を目の前に付けて運転するくらいの狭さ)し、機体の計器板の照明が乱反射を起こすためにかえって操縦士の視界が悪くなります。また、遠近感がなく不安定になったり、操縦士によっては気分が悪くなることもあります。
そのため、現在では、夜間飛行時に2名乗務する操縦士のうち、見張りを担当する副操縦士がNVGを使用しています。(海外では夜間飛行時にNVG装着しての操縦も行われるようですが、日本では法的な問題等もあり、このような運行形態となっているようです。)

なお、夜間の出動要請に備え、航空隊員は救急救命士を含めた3名が当直勤務していますが、操縦士や整備士は航空隊事務所に寝泊まりしているものではなく、自宅や空港近隣のホテルなどで待機しています。
出動要請があれば当直の隊員が準備を始めると同時に、操縦士らは事務所へと駆けつけ、気象状況や場外離着陸場の調整を行います。そのため出動要請から離陸までは数十分を要します。最も遠い夜間離着陸場までは空港から約30分かかりますから、傷病者との接触には出動要請から1時間から1時間半程度要することになります。それでも山間部から救急車で高度医療機関まで傷病者を搬送する場合に比べ、大幅な時間短縮が可能な場合もあるのです全国的には都会といわれる愛知県も、県東部にはこのような実情があるのです。



"夜間離着陸可能場外離着陸場"

夜間場外

夜間運行には欠かせない、それが夜間離着陸可能場外離着陸場です。
上の図にあるように、愛知県内で20箇所以上が設定されており、夜間の救急搬送等の際に防災ヘリが離着陸を行います。愛知県防災航空隊の夜間運行は、県東部山間地域の救急搬送を主眼としたものではありますが、山間部から傷病者を収容すれば搬送先の病院付近に着陸する必要も発生します。そのため平野部にも夜間対応の場外離着陸場が準備されています。(転院搬送等に使用される場合もあります)
昼間であれば目的の場外離着陸場まで最短距離で飛行することもできますが、夜間にそれを行えば途中の山に衝突するおそれがあります。そのため夜間運行時の経路は、いくつかの夜間対応場外離着陸場付近を経由するとともに、経路下及び経路両サイドの山々からも一定のクリアランスを得た経路を予め設定し、さらに目的の場外離着陸場への降下開始地点や降下角も統一して運行を行っています。

夜間離着陸可能場外離着陸場には、使用の都度地元消防隊が夜間照明を設営するものと、常設の夜間照明があるものが存在し、中にはヘリの燃料(ドラム缶)を備蓄しているところもあります。


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都度照明を設営する夜間場外の例(弥富市木曽川グラウンド)
普段は公園として利用される場所の場外離着陸場などがこの形態です。
夜間でも吹き流し等の設備は必要ですし、消防車両は赤色灯を点灯し、場外離着陸場の場所を示します。


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地元消防隊はこのような灯火類を地上に設営します。
夜間離着陸訓練は、地元消防隊の資機材設営の訓練でもあります。


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常設照明の夜間場外の例(田口ヘリポート)
ヘリポートとしてはじめから作られている夜間場外に多い形態です。
都度照明を設営する形態に比べ、ヘリの受け入れ体制を迅速に整えることができます。



"夜間離着陸訓練"

夜間運行の特性や危険性はご理解いただけましたでしょうか。
この夜間運行を安全に行うために、それぞれの夜間場外では年に1回以上の夜間離着陸訓練が行われます。
日没後に飛ぶのが夜間飛行ですから、当然日没を待って訓練が開始されます。そのため日没が早くなる秋頃から冬期にかけてこの訓練が頻繁に行われます。
数ヶ月の間にすべての夜間場外での訓練が計画されますが、夜間場外は山間部に多く気象も不安定であるため、なかなか計画どおりに進まないのもこの訓練の特徴といえます。(例えば下山地区ヘリポートは切り立った山の上にあるため風の影響が大きく、強風により訓練がよく延期になる等があります)


説明が長くなりましたが、それでは新舞子マリンパークでの夜間離着陸訓練の模様をご覧いただきましょう。

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日没を待ってエンジンスタート。
画像ではまだ明かりがあるように見えますが、カメラの感度を上げているためで、実際は暗い状態です。


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2名の操縦士が乗務。写真ではわかりづらいのですが、NVG付きのヘルメットを着用しています。まずはTNI機長の操縦です。
コパイ席ではFJT機長がライトを使いながらチェックを行っていますが、暗い機内では白色のライトを使うと目が眩んでしまいます。目に悪影響を与えない照明としてはよく赤色のライトが用いられますが、わかしゃちの夜間運行の場合、赤色ライトはNVGに悪影響を与えます。そのため緑や青のライトが使用されています。


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地上の誘導員は、夜間は赤色誘導灯を使用します。
離陸よしの合図が出ました。


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離陸しました。
明るい場所から暗闇に向かって、速度や高度を上げて進んでいくのですが、目が暗闇に慣れていない状態であるので周りが見えづらく、非常に危険な瞬間なのです。また、夜間であってもまれに鳥が飛ぶことがありますし、風により飛散物が発生することもありますが、容易に発見できません。見張りがとても大切なのです。


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トラフィックパターンで離着陸を繰り返します。
ひとりの機長が2回離着陸を行い交代します。


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2回の離着陸を終え、TNI機長からFJT機長へ操縦交代です。
操縦士が交代する際は整備士がコパイ席に乗り込み、何かあってもすぐ対応できる体制がとられます。
交代後はFJT機長による離着陸が2回行われます。


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すべての訓練を終えると、地上に降ろしておいた緊急出動用資機材を積載し、帰投の準備です。

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名古屋飛行場へ向け離陸。
訓練が終了しホッとひと息…というわけにはいきません。危険な夜間飛行はまだ十数分続くのです。



"さいごに"

3回に分けてお送りした知多市の隊員投入訓練と夜間離着陸訓練、いかがでしたか。
ただ訓練風景の写真をお届けするのではなく、航空隊員の行動や訓練そのものに秘められた「なぜ」を是非皆様に知っていただきたくこの記事を書いてみました。
防災ヘリの撮影をされる方はたくさんいらっしゃいますし、我々も「見てカッコイイ」写真や動画を撮影しようとすることもありますが、我々の目的は防災航空隊の活動の資料を撮影するとともに、防災ヘリに対する皆様の理解を深めていただくことにあります。

夜間対応の場外離着陸場の多くは、公園やグラウンドなど、一般の方も見学可能な場所で行われています。機会があれば是非防災ヘリの活動をご覧ください。(市の広報誌等に日時が掲載される場合もあります)
ただその際は地上消防隊員の指示に必ず従っていただくとともに、次の点にもご注意ください。場外離着陸場は整備された飛行場に比べ危険度が高くなりますし、ヘリの運行クルーは極度の緊張の中で安全運行のための活動を行っています。航空機の撮影に慣れている方でも今一度確認をお願い致します。


①定められた見学位置を守る

地上消防隊員が指定した位置での見学をお願い致します。
夜間はどこに誰がいるのか、ヘリ側から容易に確認できません。どこに誰がいるのかをヘリ側が把握できるよう、定められた位置で撮影等をなさってください。
また、訓練会場内に立ち入ることがなくても、ヘリの着陸進入及び離陸の経路下となる部分(外周部の道路など)への立ち入りもご遠慮ください。(これは昼間でも同じです)

②ヘリに対して光を発しない

NVGは光を向けられると画像が乱れますし、裸眼であっても暗い場所で急に光を当てられると目が眩み、危険を及ぼします。高輝度の懐中電灯やカメラのストロボなどの光を発することのないよう留意ください。カメラのオートフォーカス補助光もかなり強いものがありますから、機能をオフにする等をお願い致します。


文章が長くはなりましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。
また次の記事作成まで少々お待ちくださいませ。
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category: 平成26年度(2014)の訓練

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